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#709 / 2010.10.24

ユッカ

我が家の居間には、観葉植物があります。

愛称は「ユッカ」。
本当の名は「ユッカ・エレファンティペス」。

ユッカがどうしてウチに来たのか、今でも覚えています。
初めて愛車を買ったとき、納車の日に今でも懇意にしてもらっているセールス氏からもらったのです。

当時のユッカは、高さ1m弱。
ピカピカの新車のリアシート足元部分に、天を指し示すかのようにピンとはった葉をもつユッカを鉢ごと載せて家に帰った記憶があります。
ギリギリ車内高いっぱいで、なんだか随分大きなものをいただいてしまったというのが当時の率直な感想でした。

あの日から12年。
住所は3回変わりました。

愛車で東日本のほとんどの都県を巡りました。
速度計が壊れて新調したこともあったし、ブレーキパッドが磨り減りすぎて大変なこともありました。
廉価グレードのくせにストラットタワーバーとメーカー直系ワークス仕様のブレーキパッドを入れていたし、スポーツタイヤも装着しているちょっと背伸びしたクルマでした。

でも、手放しました。

もう一台使っている軽自動車のほうが小回りが利いて便利だったし、両親がクルマを買い替えるタイミングだったのであまり乗っていなかった愛車を下取に出すことにしたのです。

手放すことを決めるまでには、何ヶ月も時間がかかりました。
いろいろな思い出もあり、ずっと葛藤していたのです。

そんな時、ふとユッカを見たときに、クルマは手放してもユッカは手放さないな、と思ったのです。

そうしたらなぜか、手放すのも仕方ないかと思えるようになったのです。
乗らないで観賞用にしておくのも、クルマにとってはかわいそうなものですからね。

納車の日、自宅に届いた両親のピカピカの新車を残して、私の愛車は前出のセールス氏が乗っていきました。
その後姿に、一抹の寂しさを感じずにはいられませんでした。

確かに、手放すのは寂しいことです。
でも、これだけは言えます。
嫌な感情を抱えた状態で愛車と別れることがなくて、本当に良かった、と。

事故で廃車にしたり、誰かを愛車で傷つけたり。
そういった悲しい出来事に遭わず無事に返すことができたという思いでいっぱいでした。

あれだけさんざん葛藤していたのに、いざとなるとホッとした安堵の気持ちで満たされていました。

深く思いつめるほど杞憂に終わる、なんてことは、実は世の中の普遍的な法則なのかもしれません。
過去に捉われず時には大胆に手放してみることも、大事なことの1つかもしれません。

そうそう。
ユッカは今、私の身長を超えてしまいました。
愛車は手元を離れたけれど、ユッカは今も元気に育っています。

そっと手放してみよう。

追記(2010.10.24記)

今でも、昔の愛車と同型車種を見ると、なぜかドキドキする自分がいます。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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