懸命な木こり
むかーしむかし、あるところにたびびとがおりました。
ある日、たびびとが森の中をあるいていると、ひとりの木こりにあいました。
たびびとは休けいのために、すこし休んでいくことにしました。
はたらきものの木こりは、いっしょうけんめい、木をきっておりました。
「木こりさん、あなたもすこし休んではいかがですか?」
すると木こりは、こういいました。
「ありがとう。でもわたしはいそがしいんです。たくさんの木をきらないと。」
木こりは手を休めず、木をきりつづけていました。
しかし、木こりががんばっても、なかなか木はきれません。
たびびとがよく見ると、木こりがもっているオノは、ぼろぼろでした。
これでは、木がきれそうにありません。
そういえば木こりやオノのようすから、ずっとおなじオノで木をきりつづけてきた人のようです。
たびびとは言いました。
「そのオノではきりにくいでしょう。よくきれるよう、オノをといではいかがですか?」
すると、はたらきものの木こりは、こうこたえました。
「そんなひまはありません。だってたくさんの木をきらなければいけないんです。」
そういって、木こりはいっしんふらんに木をきりつづけましたとさ。
〜
言い回しこそいろいろありますが、よく「木こりのジレンマ」として有名なお話です。
もしこの後、旅人が木こりに新しい斧を買えといっても、チェーンソーをあげたとしても、木こりはおそらく従来の切れない斧で切り続けたでしょう。
このお話で大事なことは、少なくとも下記4点あります。
- 一度、手を休めて、自分の仕事に無駄がないか省みること。
- 斧を研ぐ、つまり自分の仕事がやりやすくなるように環境を整えたり技術を磨いたり知識を身につけること。
- 刃がボロボロになるように、過去と同じやり方に固執していると仕事の質が落ちてくること。
- 重要性より緊急性で優先順位を選んでしまうと、本当にやっておかなければならない重要なことをしないままになってしまうこと。
とくに最後は重要なので、少し説明します。
仕事では特にそうだと思いますが、一つひとつの仕事は重要か否か、あるいは緊急か否かで分けることができます。
1.重要かつ緊急なこと(重要 AND 緊急)
2.重要ではないけれど緊急なこと(not 重要 AND 緊急)
3.重要だけれど緊急ではないこと(重要 AND not 緊急)
4.重要でもないし緊急でもない(not 重要 AND not 緊急)
重要と緊急の2本軸で見ると上記4つに分けられます。
そして多くの人は1や2、つまり誰かに急かされる「緊急」事項を、優先的にこなそうとします。
そうするとそれに忙殺され緊急事項ばかりこなさざるを得なくなって、重要事項がなおざりになってしまいます。
具体的に言えば、火消し業務だったり日銭稼ぎ的なルーチンワークに忙殺されていると、自己啓発や健康維持、また人間関係がおろそかになりがちです。
これらは一朝一夕には向上が実感できないだけに、結局、緊急事態ばかりに対応し続けるしかなくなるのです。
理想を言えば、「1.重要かつ緊急なこと」よりも「3.重要だけれど緊急ではないこと」を優先的に位置づけたいものです。
緊急事態が起こるのはやむを得ませんが、それを減らすために知恵や時間を費やしていくのです。
自分や環境を向上しなければいつまで経っても同じ事を繰り返すばかりか、自身の考えや体力、また環境が劣化していくのでだんだん苦しくなっていくでしょう。
目先の対応に追いたてられるのではなく、緊急ではないけれど長期視点で見れば重要なことに労力を費やしておくことです。
クルマで言えば、あらかじめガソリン満タンにしておく、故障しそうなパーツを直したり取り替えておく、また車外だけでなく車内を掃除しておいて急ブレーキ時にものが散乱しないでおくことが挙げられます。
挙げる気になれば、事欠きません。
免許や自動車保険の更新は忘れない。
督促されないうちに自動車税を納付する。
急ブレーキを防ぐために事前にシフトダウンしてエンジンブレーキをかける、等々。
これらは、いずれも重要でないことかもしれません。
しかし、それらをおろそかにしたために、時間や労力を本来割くべきところに集中できなくなるのは実にもったいないことです。
口を開けば、多くの人が「忙しい」といいます。
気持ちは分かります。
しかし、忙しいことを「忙しい」の言葉で思考停止していては、永久に忙しさから逃れられないでしょう。
忙しさからの脱却。
それこそがまさに重要で、率先してやるべきことではないでしょうか?
追記(2010.06.07記)
とりあえず、手帳に「重要だけれど緊急ではないこと」を期限付きで書き込むことから始めるといいかもしれません。
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