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#660 / 2009.11.16

里山幻想

最近とみに「農業」や「田舎暮らし」といった、いわゆる「地方での生活」が流行していると聞きます。

実際、農家ではほとんど生計が成り立たないことが圧倒的なのですが、自給自足や完全無農薬栽培といったキーワードで地方での農作業を楽しみたいと考える人達が増えていると聞きます。
農作業をしないまでも、地方生活にあこがれる人が最近増えているとも聞きます。

地方にいる立場から言えば、率直に「こんなに不便な土地なのになぜ注目されるのか?」と疑問になっていました。
いろいろ調べてみたところ、どうやらメディアが一役買っていたようでした。

首都圏で放映されるテレビ番組や雑誌の中には、田舎にアポ無しで行って泊めてもらうとか、余生を田舎でのんびり暮らそうといったコンテンツがあるのです。
そういった「田舎は平和で苦労しない」といった、一種の桃源郷的な伝えられ方をしたものが多いことに気づきました。
ひどいものになると、古民家を月額1万円で貸してもらえるとか、農機具もすべて貸してもらえると謳うものさえあります。

いかにも「お花畑」です。

きっと牧歌的なイメージで来たら、真冬の通行止めやアイスバーン、交通機関の絶望的な不便さに何度も泣かされるでしょう。
たとえば福島県内のとある村では、村外から来る国道の4方向中3方向が冬季通行止めになります。
他に迂回路がなく当然鉄道も無いですから、まさに陸の孤島といってもいいような状態に陥ることもあります。

また排他的な土地柄もよく訪ねた経験から言えば、一概に地方だから他人に寛容とは限らないのが現状です。
地方ロケなんてのはテレビカメラがいるから皆ニコニコしているだけで、現実問題、余所者にはとことん厳しい地方も多々あります。

メディアは、すべてを伝えていません。
都合のよい部分だけを、受け手の夢を壊さないように表現しているに過ぎません。

しばらく無収入でもいい、家族も同意済み。加えて農業もするのであれば、時間をかけて農業技術を身につけた。
これくらいの覚悟で都会から地方へ移り住むのであれば、問題は少ないと思うのです。

ではなくて、メディアが言っていただの、都会から逃げ出したいだの、あるいは安い生活費で暮らせそうだの。
こんな薄甘い考えで安易に飛びついてみても、望んだ未来は、まず叶いません。

ここにきて、本題です。
何でもかんでも無邪気に100%信じるのはおバカさんである、ということです。

例えば、何の準備もなしに地方に来たとします。
すると人は冷たいし、農業で生計が成り立たないことに気づきます。

ここで、メディアで謳っていたことと違うじゃないかと考える人は、何においても失敗します。

つまり、自分で得た情報に対して自分で考えられなければ、何をやってもうまくいきません。
なぜなら、いつまでも「ウソを教えられた」と被害者ヅラしたところで学習しないから、死ぬまで他人の行動に右往左往させられる人生を歩むことになります。

他人に左右されて成功できるものなんか、まずありません。

運転も一緒だと思うのです。
到着予定時刻が算出されるカーナビがありますが、そのまま鵜呑みにして時間ギリギリにあわせて行きたい時を想像してみてください。
途中で渋滞に巻き込まれたり、遅いクルマのためにまったくスピードを出せなかったりしたことはありませんか?
そうして遅れたところで、本当は間に合うはずだったと言い訳するのでしょうか?

言い訳は何とでも言えるでしょうが、その分だけあなたの信頼度も下がるでしょう。
大事なのは、ナビに転嫁することでも、ましてやうまい言い訳を考えることでもありません。
「間に合いそうだ」という情報に対しても疑ってみて、高速道に乗るなり途中経過を連絡するなりして万一の事態を防ぐことではないでしょうか?

情報を知りっぱなしにするのは、素人です。

情報を得るコストはゼロかもしれません。
しかし、得た情報から未来をシミュレートできるようになるまでのコストは、ゼロではないのです。

情報収集後にシミュレーションしてみよう。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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