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#650 / 2009.09.14

ステロイド薬と100%病

理解してもらいたくても、言葉では完璧には伝わりません。
頭でっかちでは無理で、体験してもらわなければわかってもらえないものは多々あります。

あなたしか知らないことは、いくら肉親でも知らないはずです。
そう考えると、あなた自身を100%完璧にわかっている人なんて無く、意識的には家族でも別個の人なのです。

きっと多分、自分の思いを100%完全に伝えるなんてことはできないのかもしれません。
あなたが傷ついていても、親兄弟のような身近な人ですらそういう状態に無ければ、傷ついたことを深く理解してもらえないでしょう。


閑話休題。
650という節目の回だし、たまには自分のことでも書いてみようと思います。

実は私、物心がついたころからアトピー性皮膚炎で悩まされて続けています。

ただの肌荒れならともかく、ものすごいかゆみを伴い、掻けば掻いたでカサカサするし、ひどいときには掻きすぎて全身が痛いのです。
小学校時代にはかゆくてカリカリ掻いていたら、通知表には「落ち着きの無い子」と書かれた記憶があります。
成人してからはある程度落ち着いたのですが、それでもまだ完治には至っていません。

超乾燥肌になり。
ものすごく痒い青春時代をすごして。
皮膚がただれそうなくらい掻きすぎて、痛くてどうしようもなくなり。
夜、布団に入っても、かゆくて寝られずに2時間も3時間も一人うめき続けたり。
仮に運よく寝られたとしても、翌朝起きれば、無意識に掻いた部分からの出血でシーツを汚して自己嫌悪に陥ったり。

脱皮するかのごとく皮膚をすべてむき、総移植したい。
患部すべてを切り落として、本気でおさらばしたい。
今まで何回考えたことか数え切れません。

ものすごく症状が悪くなると、今でも本気でこう思います。
でも、この身体で生まれてきたのだから、なんとか改善しながら死ぬまで付き合ってみようとも思うのです。

もちろん、私もただ時間を浪費していたわけではありません。
いろいろ自分でも勉強してみて、酒類は血液循環を活発にしすぎてよりかゆくなること、また添加物たっぷりの食事では改善しにくいこと、それにステロイド薬はかゆみを抑えるだけでしかないことなどがわかってきました。

しかし、毎回診療に行くたびに変わらずステロイド薬ばかり処方する医師も多いのです。

ステロイド薬は短期的にはかゆみを抑えても、完治はしません。
はじめは抑えていたかゆみでも病原菌にステロイドの耐性がついて効かなくなり、今度は更に強いステロイドを処方される。
そのイタチごっこが繰り返されるのです。

患者ひとりひとりは、ステロイド薬臨床試験の被験者ではありません。

そういう過去もあって、医師はすべて信用していません。
もちろんこう書くと、医師の方から反発もあります。
医師が良かれと出しているのだからなぜ信用しないのか、といわれたこともしょっちゅうでした。
確かに善意で処方するのでしょうが、こちらは薬で悪化するトラウマをひきずっているだけに簡単に意識を変えられません。

結局、アトピーは薬に頼るより、健康的なものを食べて患部の保湿をしっかりやっていくことがいいようだと経験上わかりました。
とはいえ医学的な裏づけは無く、あくまでも自分の経験則でしかないことも付け足しておきます。

それこそ気の遠くなるぐらいいろいろ格闘してなんとかここまでたどり着いた、というのが正直なところです。
今に至るまでの半生を、皮膚の悩みで苦しみ続けたから、自分では痛いほどつらさがわかっているつもりです。


と、ここまで書いてみました。
ほじくればもっと言いたいこともありますが、ここまでを100%わかってほしいなと思いをこめて今まで書いたことのないところを書いたつもりです。

でも。
でも、なのです。
他人がここまで読んで100%完璧にわかってもらえる、とも思っていません。

こればかりは自分でなってみないとわからないでしょう。
もし私同様にアトピーに悩まされる人が読んでいたとしても、90%程度は伝わっても完璧な100%は無いだろうとも思うのです。
だから「頑張れ」なんて言われても、お前ちっともわかってないのに気軽に言ってくれちゃって、と思う自分もいるのです。

そんな人生を歩んでいるせいか、自分の思いなんてせいぜい10%も伝われば御の字だと考えています。
たまに何が何でも完璧に思いを伝えるぞと息巻く人もいますが、本気で完璧に伝えられることを信じて疑わない姿勢に甘さを感じざるを得ません。

もっと言えば、ほとんどの人はなんでもかんでも盛り込んで話をカッコよくしたがります。
そしてすべてを伝えようとしたがります。

そんな満艦飾は、デコトラやドレスアップカーに任せておけばいいのです。

あれもあります、これもあります。
だからすごいでしょ?感動するでしょ?
こんな風に意見を押し付ける魂胆が透けて見えてしまうと、正直、心は揺さぶられません。

自分が頑張れば、相手に100%伝わるなんて思うのは、大間違いです。
クルマだってエンジンをフル回転させても、冷却水、輻射熱、機械的フリクションロス、それに排気熱で60%程度ものエネルギーロスが発生するのです。
それと同じで、心に秘めるものが多くても、あがったり忘れたりでいいたいことの半分もいえなかったり、話す時間が長すぎて相手が聴く姿勢を無くしてしまっては、相手の心には残りません。

もっとわかりやすく言えば、スピーチ下手な人が結婚式でスピーチをするときのようなものです。
欲張ってしゃべろうとするから、聞き手にはどうでもいい会社紹介やら「3つの袋」やら出てきて、時間ばかりが無駄に費やされる。
すると、かけた熱意と時間とは裏腹に、実は誰も聞いてくれていなかったということになります。
こと、話好きを自認している人ほど、陥りがちな罠です。

完璧なんて狙わなくていい。
こう考えているだけで、あがることもないし、無駄に肩に力が入ることもありません。

あなたは神様じゃなくて、ただの人間なんだし偉くもなんともないのです。
今の立場がどうとか、過去にどんな会社にいて何をしてきたかなんてことも、言ってみればどうだっていいことです。

地球上の誰しも、崇め奉られるほどの存在ではないのですから、気負うことなんかない。
突き詰めれば、こんなものです。

カッコよくいろんなことをやってやろう、なんて考えているうちは、誰の心も動かせません。
1割でも良いから思いが届けばいいという姿勢のほうが、断然うまくいくものです。

世の中、10%できれば御の字なのです。

10%を目標にしよう。

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