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#578 / 2008.04.27

クルマを買わない8つの理由

自動車の販売台数減少に歯止めがかかりません。

社団法人日本自動車販売協会連合会によれば、登録車と軽自動車の販売台数は2007年で535万台でした。
これは1982年度の533万台以来の低水準で、ピークの1990年度の780万台から実に30%強もの縮小です。

各メディアでは日本経済牽引役としての自動車産業が不振であることを報じ、メーカーはその理由を模索しています。
あるメーカーではマーケティングを強化したりカフェ仕立ての販売店舗に改装したりと対策を採っていますが、ここ10年の販売台数を見る限り、横ばいか前年比数%減となっているのがよくわかります。

製造や販売サイドには恐縮ですが、「なぜ売れないか」を焦点にしている以上、販売台数は伸びないだろうと私は考えます。

そもそも「売れない理由」という言葉自体、需要側でなく供給側の発言です。
われわれ一般消費者の立場で考えないままに、なぜこんなにいいクルマがだの広告費をかけたのにだのを議論しても答えは出ないでしょう。

とくに若年者層に顕著なクルマ離れが起きているといわれます。
いち若年者として、これには同意します。
詳細は後述しますが、積極的にクルマを買いたくなくなるのもうなずけます。

なぜ売れないかでなく、なぜ買わないのか。
今回は、考えられる8つの理由を挙げます。

可処分所得の少なさ

若年層は可処分所得が少ないです。
それは単に勤続年数が短いとか将来まったくあてにならない年金保険料を納めるというだけでなく、派遣の給料ピンハネが横行していたり企業利益を労働者にきちんと還元していない企業が多すぎるのです。
30歳近くなのに月収手取15万円・年間賞与5万円なんて中小企業は、地方には本当にゴロゴロ存在しています。

あなただったら手取15万円で家賃等の生活費を払い、なおかつクルマを維持できますか?
私なら、これではギリギリ生活できません。
よく年長者は働かないのが悪いだの浪費家が多いからだと間違った指摘をしますが、若年層ほど経済的に不利益な立場になりながらも年金支給や医療費を支えてくれていることを考えればとんでもないことです。

しかし翻せば、現実を知っているだけ堅実だということです。
むやみにローンを組んだりせず衝動買いをすることが少ないから、若年層は理性的だとも言えます。

不安

理性的だからこそ、将来を想像して不安になるのです。

貯金がないと病院にすら行けなくなるかもしれない時代に、考えなしにクルマで散財できますか。
夕張市や大阪府がかすんでしまうぐらいの破綻寸前の日本で暮らしているからこそ、あえて贅沢に走らないのです。

一度知ってしまった贅沢の味はなかなか忘れられなく、将来、自分の変化を一番に妨げることでしょう。
いまだに未練がましくバブル期をひきずっている人もいるくらいですから、いざというときに余計に惨めにはなりたくないのです。

消費者の心理変化

続いて、心理的な問題です。

携帯電話が普及したことで、多くの人は携帯電話を持つほうが価値があると考えるようになったのではないでしょうか。
クルマは週2日も乗らないけれど、携帯電話なら毎日使う人はざらにいます。
使用頻度とコストから考えると、圧倒的に携帯電話有利です。

自分にとってコストパフォーマンスの高いものを重要視して買うようになった、ということです。

高価をステータスと勘違いしなくなった

クルマを所有することで豊かさを実感する時代は終わりました。

私は信じられなかったのですが、20年ほど昔は女性を口説き落とすためにクルマを買う人が多かったのだとききます。
若くしてポルシェやBMWのような高級外車を買い、それでステータスを見せ付けていたといわれます。
当時のBMW3シリーズは「六本木カローラ」などと揶揄されていたのです。

そんな時代だったから、女性も自分にとって高価をつけてくれたかだけの短絡的思考でも通じたのでしょう。
不思議と現代のモンスター・ペアレント世代と相通じるものがあるように思えてなりません。

乗りたい車がない

「正直、クルマなんかなんでもいい」という人達がいるなかで、運転にこだわりを見出したい人たちも少なからず存在します。
ところが今新車でスポーツカーを買おうとすると、本当に少なくて困るのです。
ゼロではないのですが、日産GT-R(777万円)や三菱ランサー(350万円)、スバルインプレッサSTI(344万円)などは販売価格が高いだけでなく、日本では性能をフルに発揮できる場所が少ないのです。
もう極端に肥大化したスポーツカーか、去勢されたファミリーカーばかりがリリースされることに食傷気味です。

それでも何車種かは乗ってみたいクルマがあります。
ダイハツコペンやスズキスイフトスポーツ。三菱コルトRALLIARTは日本の公道でも痛快な走りが期待できるのではないかと思います。

移動手段のシフト

都心部のみでしょうが、原油高やPASMO等によって公共交通機関に回帰しつつあるのかもしれません。
あるいはすり抜けのできる二輪車にシフトしているか。
先日東京に出かけたときに二輪車に多く遭遇したので推測の域を出ませんが、駐車場代も高くそのうえ渋滞に巻き込まれ燃費も悪化するくらいならクルマを手放すほうが得策でしょう。

旧態依然

つづいてはメーカー側の意識について。
冒頭でも書きましたが、「なぜ買わないか」でなく「なぜ売れないか」が焦点であるから買わないのです。

経済活動は往々にして、心で動くものです。
いわばふらっと立ち寄ったコンビニで、買うつもりの無い缶コーヒーやお菓子を買ってしまうようなものです。
なんとなく欲しくなって財布の紐を緩めてしまうから、経済活動が起こるわけです。

クルマも一緒で、とくにこだわりが無ければクルマはなんだっていいのです。
そうすると一部のカーマニアを除けば、どれだけ知っているかがそのクルマの購入理由となります。

逆に言えば自分が否定的な感情を持てば、お金が動くことはありません。
中国からの輸入ギョーザに毒物が混入されていたときは、一斉に中国製品を買わなくなるのと一緒です。

クルマを買わなくなるのも、そのメーカーや販売店に嫌悪感を抱けばこそ起こるのです。

こぎれいな企業CMを打っても、大量の期間工を低賃金で働かせているとか海外の販売成績を意識して媚米や媚中のごとき態度を取ったりしていませんか。
少なくとも私は国内経済の牽引役なのだからせめて国内景気を良くして欲しいと考えますので、こうした話題がたびたび挙がることも国内不振の一因ではないかと思っています。

消費者は賢くなっていくのにメーカーの意識が古いままでは、買いたいクルマも買いにくくなります。

法の制約が多すぎる

せっかくクルマを楽しみたくても、国内では法の縛りが多くてうんざりします。
暫定税率の復活に消費税の二重課税、そして車検制度。
ちょっと飛ばせば警察の検挙に貢献するだけ、おまけに駐車禁止はがっちり取り締まる。

スピード違反や駐車禁止を奨励するつもりは毛頭ありませんが、仮に無違反だとしても車検だなんだと年間10数万円レベルでお上に持っていかれてしまうのです。

さすがにクルマ好きな私も、書いていてだんだん悲しくなってきました。
これは貧乏人はクルマに乗るなということに等しいですから、昨今の景気を考えればクルマ離れするのもうなずけます。

逆に、これらを解決すれば活性化するか?

私は、解決すると思います。
ただし、上記8つがすべて改善すれば、という条件付きです。

上記8つは個人的な意見もありますが、大半の人は上記の1つもしくは複数の理由からクルマを買わないのだと思います。

今の若年層は、自分にとって無用のものにはきちんとノーといっているだけ、という至極正しい姿勢を貫いているだけです。
これは若いころに好景気に恵まれた年長者への僻みでもなんでもなく、広告やメディアに踊らされず必要なものを取捨選択できることの証拠です。
口説き目的やステータスシンボル目的に、クルマを買う若年層はほとんどいないのです。

踊らされない相手が、手ごわいのです。

3年後のリセールバリューが良いといっても乗りつぶすから関係ないと言われ、みんなに選ばれていますと言っても私はみんなと違うから関係ないと言われる。

バブルや団塊世代に通じたセリフで踊らされるほど、若年層は甘くありません。

むしろ一人ひとりこう生きたいという信念が強いから、それをサポートしますよと言ってくれたら売れるかもしれません。
保証はできませんが、踊らされやすい相手とは違う提案でなければ失敗するでしょう。

よく簡単に「価値観の違い」で一蹴されがちな話題ですが、住宅や保険についで高い買い物となるクルマ1台とっても本気で将来のことを考えて行動している人たちが増えているということです。

自分の意識を強要してはいけないし、される必要も無いのです。

ものさしの違いを知ろう。

追記(2008.04.27記)

それでも買ってもらえませんか……?
では、バブルや団塊世代のリッチな方に10台でも20台でも買ってもらえばよいでしょう?
若年層を煽るだけでは事態は好転しないことに、まだ気がつきませんか?

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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