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#576 / 2008.04.13

開発撤退からの再出発

視点を変えれば、未来への第一歩です。

2008年4月10日、富士重工は軽自動車開発から撤退すると発表しました。
1958年のスバル360から続くスバル製軽自動車50年の歴史に幕が下りるのです。
そして近いうちに1車種ずつ、ダイハツ供給のOEM車に置き換わって販売される模様です。

いちオーナーとして言わせてもらえば、スバル車は商品力が劣っているとは思いません。
今乗っているプレオRSは、4気筒エンジンに4輪独立ストラットと普通車並みの装備にくわえスーパーチャージャー搭載車。
またサンバーは駆動方式がRRであるため、後輪のトラクションがかかりやすいことから赤帽を中心に採用されています。
他社の軽自動車と比べても安かろう悪かろうと言うわけではなく、むしろ性能を考えれば割安だったりします。

しかしそれは一般の軽自動車ユーザーにとっては過剰品質だともいえます。
もしその開発費の一部を広告費に投じていたら、もっと売れていたかもわかりません。

とはいえ、ビジネスの世界ですから「たられば」をいっても仕方ありません。
事実、2007年4月〜2008年3月の車種別販売台数(社団法人全国軽自動車協会連合会)で言えば、スズキワゴンRが224,082台、ダイハツムーヴ199,924台。
以下、タント、ライフ、ミラ、アルト、モコ、EKワゴンときて、やっとスバルステラ48,925台がランクインします。
なんだかんだで軽乗用車販売ベスト15位以内に、スバルは1台しか現れない状況です。

結果、スバル車は高性能でありながら販売面では芳しくなかったのです。
これは技術力では商品力を高められても、販売台数を高めるとは限らないことを示しています。

開発撤退については推測ですが、ホンダをしのぐ航空機技術がほしいトヨタと、軽自動車工場稼働率をあげたいダイハツ。
それと水平対向エンジンと4WD技術に経営資源を集中させたい富士重工。
この3社の思惑で今回の件にいたったのでしょう。

しかしながらいちオーナーとしても、この発表には複雑な心境です。
とくにスバルの場合、走行性能の高さから愛用しているオーナーが多いのです。
すんなりとダイハツ製に移行できるかといえば、大半のスバルオーナーは否と言うでしょう。

とくに赤帽のような軽貨物業界が絶大的な支持をもつサンバーからハイゼットに簡単に移行する、とは考えにくいです。
もしもサンバーの生産ラインがダイハツの工場にまるまる移管でもされなければ、サンバー後継車種は売れないかもしれません。

正直、製造販売側の論理とユーザー側の論理では異なるわけで、オーナーから見れば歓迎したくない発表です。
それゆえ、しばらくはオーナーから経営層への非難が続くかもしれませんが、長期的に見ればひとつの英断だと思うのです。

なぜなら、逆に伝統にこだわって赤字を垂れ流していたら、メーカー本体が倒れてしまいます。
そうならないように縮小し別の手段に置き換えられることは、長い目で見たらメーカーの利益です。

縮小できるということは、自分の身の程を知っている証拠です。

これは大事なことだと思うのです。

人によっては謙虚すぎるなとか、自分の限界を決め付けるなと言う人もいます。
しかし経験上、そういう人に限ってどんなものかと思えば結局凡人の域を抜け出ていない人に多いのです。
不思議なもので、自分のコンプレックスが強い人ほどそれを否定する言葉を発したがるのです。

それは、心のどこかでコンプレックスを意識しているためです。
でもそうやって言葉にしてしまうことで、その人は逃げているのです。
一見向き合っているかのようで、先延ばししているだけなのです。

今、自分のマイナス部分を認められる人が強いのです。

自分はこれは弱点だ、と晒けだせるから、口先だけでなく本当に改善させることができるのです。
ここでヘタレなプライドを出してメンツにとらわれていたら、企業自体が破綻するかもしれません。
そうなってはメンツもくそもありません。

突き詰めればプライドをとるか実利を取るか、という話になるのです。
実利は確かに手元には残りますが、プライドは手元に残りません。
そう考えれば、プライドにこだわることが得策とは限らないでしょう。

安易にプライドを捨てなさいとは言いませんが、プライドをとって何も残らないのならとるべきものではないということです。

マイナス部分も認めよう。

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