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#562 / 2008.01.15

カイゼンの次にくるもの

いまや「kaizen」なる英単語まであるカイゼン。

カイゼンとは、トヨタ生産方式の基本概念の1つです。
生産現場における7つの無駄をなくすことで、つくりすぎ、手持ち、運搬、加工、在庫、動作および不良品の無駄をなくすことです。
いまや世界屈指の企業となったトヨタを真似しろとばかり、多くの製造業会社でも実践されています。

それに輪をかけるようにトヨタOBが伝道師よろしくトヨタ本を執筆したり、指導したりするとも聞きます。
そうこうして生産現場では、生産性効率化が当たり前となっています。

しかしこのカイゼン。
企業存続の視点でみたとき、重大な視点が欠けています。

それは、意識が社内改善化のみに偏っていることです。

結果、利益を増やすべくカイゼンしているのに肝心の収益が増えない。
例えれば、節約上手なのに貯蓄が増えない奥さんみたいなものです。
節約術には長けているんだけど、肝心の儲けを増やそうとしなければ効果半減です。

OUTだけ頑張って、INをなおざりにしてしまっているのです。

確かにトヨタは、世界屈指の自動車メーカーです。
カイゼンを推し進め、営業利益2兆2,000億円(2006年度)を達成したトヨタ。
しかし、私個人は「そんなに誇れることかな」という疑問も感じます。

下請企業や期間従業員への激しい締め付け。
新発売するほとんどの車種が、対抗車種ばかりのオリジナリティの薄さ。
値付けの高さが裏目に出ているレクサスブランド。

生産力の高さは、自動車会社として優秀な姿なのでしょう。
しかし売らんかな儲けんかなの姿勢が見えて、自動車に対する情熱が今ひとつ伝わりません。

初代プリウス以来、トヨタがこういう思いで開発しましたというのが、少なくとも自分には感じられません。
F1参戦やスバルとのスポーツカー共同開発を打ち出していますが、単発のアピールにしか見えないのです。

ひょっとしたら、トヨタは日本人ユーザーを直視していないのかもしれません。

思うに国内市場が冷え込んでいる原因は、家計に余裕がないことが主因でしょう。
その証拠に、家計貯蓄率が最低の3.2%(2006年度)まで落ち込んでいるといいます。

ガス代も高速代も高くて、おまけに税金も高い。
クルマ離れや浪費が原因じゃなくて、それだけ国民が搾取されている面も否めません。
それとも、貧乏人は乗らなくて結構ということなのでしょうか。

トヨタに限らず自動車会社は「クルマ離れが増えた」で思考停止する前に、暫定税率廃止とか揮発油税と消費税の二重課税廃止とか、さらには自動車税見直しなんてのを提言してもいいのではないでしょうか。
どれだけ官僚と癒着しているのか知りませんが、提言もなしにただ景気回復待ちしているあたりに悪意めいたものを感じます。
いくら国内不振でも北米市場で売れればいいというのでは、あまりに近視眼的です。

悲観的にみれば、日本の企業が国内市場に背を向けているとしか見えなくなる。
これが作り手とユーザとの間に越えられない壁をつくってしまうのでしょう。

自動車会社に限らず、個々人の仕事でも同じだと思うのです。

いくら「カイゼン」や「win-win」など御託を並べても、自己満足に終始するのは愚かです。

「自分は一生懸命やっていますから」と言っても、結果が伴っていない。
「勝つ」なんて言葉で鼓舞しても、精神論で終わってしまう。
「こんなに努力したんだから」で終わって、反省もしない。

自分ひとりが頑張ったから結果が出るなんてのは、団体生活では通用しません。
製造担当者のつもりで考えてみてください。
いくら自部門で間違いなく製造しても、他部門でミスがあればリコール扱いです。
そうすると部門関係なしに「あのメーカーは!」となるのです。

そうして他部門を疑い、他人を疑い、ひいてはユーザーをも疑う。
自分さえ良ければいいという発想では、やはりどこかでギスギスしてしまうのです。

本当のカイゼンは、自分の無駄をとりつつ相手の利益を満たすことではないでしょうか?

器の大きいカイゼンをしよう。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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