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#532 / 2007.09.02

成長という強迫観念

残念なことに、近年の小型車はモデルチェンジすると3ナンバー化します。

現在、新車販売されている車両のうち、5ナンバーだった車種は軒並み3ナンバー化しています。
この手の話が出ると決まってデビュー後35年経過するホンダ・シビックが取りざたされますが、他社も同様です。

高級化、走行安定性強化、北米販売強化。
いろいろな理由はありますが、初代もしくは先祖モデルと比べると明らかにサイズが大きくなっています。

最近、特に多いのが全幅を拡げて3ナンバー化するケースです。
排気量は2,000cc以下でありながら、全幅値が軒並み1,700mm代を示しています。

考えてみれば、そうなのです。
エンジンが大きくなれば、自動車税と燃費が高くつき同一車種ユーザーが離れるでしょう。
かたや全幅1,690mm代の車種を横に10mm程度増やしたところで、費用的なデメリットはそんなに発生しません。
それでいて大きく立派に進化させたように見せることができるのです。

新規顧客より同一車種ユーザーへの買い替えアピールのために肥大化させたともいえそうです。

もちろん例外もあります。
2007年7月に全面改良したマツダ・デミオ。
従来比で車重100kg減というので、1,300cc/5MT/FFモデル同士で比較してみました。

型式発売年グレード燃費エンジン車両重量
1 LA-DW3W 1996 L 18.6km/L 直4SOHC(B3E) 960kg
2 DBA-DY3W 2002 カジュアル 19.2km/L 直4DOHC(ZJ-VE) 1,070kg
3 DBA-DE3FS 2007 13C 21.0km/L 直4DOHC(ZJ-VE) 970kg

たしかに2代目と3代目で100kg重量が違います。
車重が1,000kgを切ったおかげで自動車重量税が年額6,300円も安くなるばかりか、燃費向上にもつながっています。
表を見るとわかるのですが、同じエンジンを搭載していても100kgの減量で2km/L近く燃費が向上しました。

しかしながら、こうしたサイズダウンは稀です。
その証拠に初代と2代目を比較すると、肥大化の例に漏れず車重1割増のモデルチェンジだったのです。

そんなメタボリックな近年の自動車ですが、正直ユーザーの大半はどう考えているのでしょう。
統計を取ったわけではないのでわかりませんが、少なくとも私には食傷気味です。
小型車本来の身上である走りやすさをみずから手放しているとしか思えないのです。

いくら想像してみても、肥大化する本当の理由は各メーカーの胸のうちです。
しかし本当のところは、ユーザーも含めて1つの国民病にかかっているからではないかと思うのです。

いうなれば「成長という強迫観念」です。

ある年代以上の年長者達は、若い時代に経済成長あるいはバブル等の好景気を体験しています。
その人達は、次々と開発される製品たちが大きく立派になっていくさまを見ながら今日に至っています。
それが、モデルチェンジは大きく立派になるものと暗黙の了解をもたらしているのではないでしょうか。

結果として、メーカーは肥大化を拒みながらも、見えない総意が肥大化を後押ししてしまっているのもしれません。

肥大化で豊かさを誇示する価値観を抱くのは、もうやめにしませんか?

以前よりも何かしら進化させなきゃいけない考えは、発展途上段階であればわかります。
しかし国内の開発はあらかた終わった今の日本に、進化の余地は少ないではありませんか。
むしろ少子化で確実に衰退しているのに、前時代的な肥大化で大勢のユーザー達をごまかしているようにしか見えません。

本質を見抜いていかなければいけない時代だと思うのです。

表面的な量や体積にごまかされないでください。
外観の進化は、内面の進化とは必ずしもリンクしません。

近年のダイエットブームで脂肪を落とすことが流行っています。
しかし本当に削ぎおとすべきは、私達の過度の進化願望なのかもしれません。

進化への妄信を見直そう。

追記(2007.09.02記)

ここで3ナンバー車をおさらいすると、次の条件のうち1つでもあてはまると3ナンバー車になります。

  • エンジン排気量が2,000ccを超える(ガソリンエンジン)
  • 全長 4,700mmを超える
  • 全幅 1,700mmを超える
  • 全高 2,000mmを超える

そして、これらの数字をすべて下回る場合5ナンバーになります。
参考までに調べたところ、トヨタハイエースバンのロング/標準/標準ルーフモデルが、ギリギリ5ナンバーサイズです。

ちなみに軽自動車の規格サイズは以下の通り。

  • エンジン排気量が660cc以下
  • 全長 3,400mm以下
  • 全幅 1,480mm以下
  • 全高 2,000mm以下

軽自動車については、軽自動車の存在意義にまとめました。
よろしければ、ごらんください。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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