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#388 / 2005.01.16

ことだまクオリア

精霊は、ことばの音に宿ります。

黒川伊保子著「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」(新潮新書)によると、 ことばの音から潜在脳に浮かぶイメージを形成させる、とあります。
それは、ことばの各音にはクオリアと呼ばれる普遍的な感性の質があるためです。

以下は、上の本から抜粋した各音のクオリアです。

クオリア
母音
a音 属性:意識の向かう対象
i音 属性:まっすぐに意識対象に突き進む
u音 属性:小さな閉空間、自分の体内
e音 属性:平たい空間の広さ、遠さ、時の永遠、へりくだり、奥ゆかしさ
o音 属性:大きな閉空間、自分の身体を包み込むような大きさの空間または物体を喚起
子音
k音 属性:硬さ(最大)、強さ(清音中最大)、乾きの質(最大)
意識:緊張、スピード感
質感:密度・硬度の高い固体の表面、尖ったもの、角張ったもの、輝くもの、回転、曲面、乾き、ドライ感、 小ささ
c音 発音上では、kもしくはs音
表記上では、kより曲面・回転をイメージしやすい
s音 属性:空気感、摩擦係数の低さ、適度な湿度感
意識:爽快感、健やかさ、静けさ、スピード感
質感:適度に湿った空気、空気感のある表面肌、紙、木綿布、土・砂地、滞りのない様子、スムーズ、 風のイメージ、光拡散のイメージ
t音 属性:硬さ(大/k音に準じる)、強さ(k音と同等)、湿度・粘性
意識:確かさ、充実感、賑やかさ
質感:粘性の高い液体、硬度の高い殻に覆われている粘性の高い液体、中身の詰まった感じ、 濡れた感じ、粘り気、照り
n音 属性:密着度(最大)、粘性(最大)
意識:癒し、ナイーブ、私的
質感:粘性の高いゲル、なめらかな肌女性の素肌、密着した感じ、遅さ、停留
h音 属性:温感、適度なドライ感、空気感
意識:リラックス、未来感
質感:広い空間、風呂で手足を伸ばす感じ、解けるイメージ、羽毛のようなふんわりした抱擁感、 静けさ、早さ、ドライ
m音 属性:柔らかさの質、丸さ
意識:女らしさ、母性、満ち足りた思い
質感:柔らかさ、あいまいさ、豊満、まろやかさ、甘さ、家庭的、遅さ
r音 属性:弾性
意識:理知的、哲学的
質感:リズム感、継続性、自然法則、冷たさ、透明感、強さ、重さ
y音
拗音(ゃ,ゅ,ょ)
属性:直前のことばの音を和らげ、そのクオリアを拡散・昇華させる効果。やわらかな光
f音 属性:ふんわりした、ものごとを霧散させ非現実にしてしまう
v音 属性:ほのかな暗さの中のぼんやりした光
w音 属性:輪郭がぼやける拡散型の膨張
濁音(g,z,d,b音)
半濁音(p音)
属性:膨張、放出、振動

例えば、クルマの名前には意図的にc音が使われています。
カローラ、セルシオ、キューブ、シビック、コルト、コペン。
これはc音が、膨張と放出のイメージを持つ生殖期間中の男性脳を興奮させるからだとも言われます。

特にトヨタはかつて、c音ではじまる車名をよくつけていました。
単にクラウン(王冠)、カムリ(冠)、コロナ(太陽の冠)、カローラ(花の冠)と、 冠を意味する言葉でそろえただけではありません。
c音のもつ硬い曲面やスピード感、それに回転のイメージが、クルマを連想させやすいことからつけられていたのです。

もちろんイメージであって、ことばの音がそのものの印象のすべてをあらわすわけではありませんが、 音の持つクオリアが、そのものの性格付けに一役買っていることは確かです。

ネーミングは戦略。

ネーミングには、名付け親の思いがこもります。

いつもコラムを書くたび、タイトルネーミングに苦しみます。

まず、話の全体像が凝縮されているタイトルであること。
そして、読み手の注意を惹きつけるようなタイトルであること。
それから、今までに使ったタイトルはつけないこと。

結論も大事ですが、タイトルはもっと大事です。
タイトル1つで、コラムの内容がまったく変わってくると言っても過言ではありません。

それは人の名前も同じです。
赤ちゃんの名づけランキングをみると、 上位はドラマや漫画のキャラクターから頂戴したとしか思えないような名前が並びます。
それがいけないわけではありませんが、真剣に悩まず安易に頂戴しただけだとしたら、これは寂しいことです。

名は体をあらわします。
育てたいのは、キャラクターのコピーではなくて、自分の子供であるはずです。

何年、あるいは何十年かたって名前の由来を聞かれたときに、 こんなエピソードから必死にネーミングしたんだと伝えられれば、最高ではありませんか?

ネーミングに思いをこめよう。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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