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#261 / 2003.05.13

ユニバーサルデザイン

年齢、性別、障害の有る無しにかかわらず、万人が使いやすいと感じるにはどうしたらよいか。
これを突き詰めた設計思想が、ユニバーサルデザインです。

クルマも含め工業製品のほとんどは、このユニバーサルデザインを重視した設計に切り替わっています。
誰でも違和感なく乗れる製品を造ろう、という流れです。

誰でも乗れるというと、少し前までは、乗員が障害を持つか持たないかだけしか考えていなかったように思われます。
例えば「ウェルキャブ」などと称される福祉車両は、乗り降りの困難な乗員向けに設計されたクルマです。
かといって、同乗する健常者に対しても特別に考えた設計がなされているかと言えば、 それはなかったのではないでしょうか。

下火にこそなってきましたが、ここ数年のミニバンブームは「誰でも乗れる」クルマへの渇望だったのかもしれません。
高い車高に、大きく広がるドア。
着座位置と腰の高さがほぼ同じ位置にあるから、乗り降りはとても容易です。

果たして乗り降りは容易になりました。
しかし運転しやすさは、取り上げられてきませんでした。

ここへきて、もう間もなくトヨタ・ALSVが発表されます。
Active Life Support Vehicleの頭文字をとった名称です。
おそらく、次期型のラウムとして発表されます。

現行型からの大きな変化は、2つ。
センターピラーレスと楕円型ステアです。
つまり、前席と後席のドアの間の柱(センターピラー)を無くした(レス)ボディ形状で、 さらにハンドルは楕円型に変わった、と言うことです。

柱が無いから、乗り降りが楽です。
また楕円型ハンドルは横長の楕円型なので、腹部への圧迫を減らすとともにメーターが見やすくなります。

結果として、万人に乗りやすく、また運転しやすいクルマになるということです。
でも、そのためにボディ剛性を高めたり、人間工学を追求するのは並大抵なことではありません。

万人受けするものほど、作り手は苦労します。

対象が漠然とすればするほど、個性が薄まります。
でも、作り手が作りたいのは、往々にして個性の強い物です。

例えば、自動車メーカーの技術者が作りたいのは、スポーツカーだったり、オープンカーだったりします。
大衆車を作りたくて技術者になる人間は、あまりいないものです。
でも、万人受けするような大衆車をつくるプロジェクトにまわされたりすることもあるでしょう。

個性を主張する物を生み出したいが、現実はできるだけ無個性な物を作らなければならない。
この矛盾が、苦労する原因です。

でも、ここで発想を変えてみたのがユニバーサルデザインです。
あえて個性を抑えて、乗員の快適性を重視したことで、まさしく「乗用車」の役目を果たせるのです。

無個性さを求める人は、きっといます。

人間でも同じです。
仕事に従事している人なら、個性を抑えなければならない職業の方もいるでしょう。
学生でも、学内で勉強をしている時間やアルバイト中は個性を抑えておく必要があります。

でも、個性を抑えることは、けしてネガティブなことじゃなくて、フォーマルに振舞うための訓練です。
そしてフォーマルさを求められるときは、突然やってきたりします。
冠婚葬祭は、まさにそれです。

予告が無いから「いざ」なのです。
それにオロオロせずにこなすには、無個性への免疫をあらかじめ自分でつけておくことです。

たまには、無個性に徹してみよう。

追記(2003.05.13記)

無個性について考えてみました。
極めれば、それも個性になりますね。
むやみやたらに個性を叫ぶ没個性人よりは、はるかにマシだと思います。

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