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#202 / 2002.10.31

親愛なる君へ

拝啓

いつもありがとう。

初めて出会ったときから、ずっと好きでした。

あの時は、君を選んでいいのかと迷ったけれど、君に決めて本当に良かった。

それから、ずっと楽しかった。

いろんなとこ、一緒に行ったよね。

木漏れ日の丘、夕闇の海岸、朝焼けの駅、雪舞う街。

ほら、覚えてる?

一緒に花火見に行こうとした時のこと。

海までの道がものすごく混んでて、結局行けなかったんだよね。

コンビニの駐車場で、空に映る大輪の華を見てたんだっけ。

幸せだった。

本当に、幸せだった。

このまま、幸せが続くような気がしたんだ、永遠に。


そして、どれくらい月日がたったんだろう。

お互い、大人になった。

君を泣かせるようなことは、してこなかったつもり。

いつも通りの今日が過ぎゆくものだと、思っていました。

でもそれは、突然、切り出された。

「もう一緒には行けない」


――――――とうとう来た。

わかってはいた。

あの持病が再発したんだね。

治してあげたいけれど、もう薬がないんだよ。

古い薬だから、あったとしても手に入れることは難しいんだって。

以前、主治医から言われたフレーズが、ふとよぎる。

「次でアウトかもしれませんよ」。


「私はいいから、新しい人みつけなよ……」

何、言ってるんだよ。

そんなのは、聞きたくない。

頼むから、先に行かないで。

でも、声にならなかった。

悲しみを極めると、涙すら出なくなる。


そして君は、本当に動かなくなってしまった。


僕は世界一幸せ者だった。

だって、君がいたから。

君に出会えたことが、一番の幸せだった。

ありがとう。

本当に、ありがとう。

今でも君のことが、好きです。


それから3年。
今の彼女と付きあっている。

君と姿かたちが、よく似ている。
ちょっとジャジャ馬な性格も、君みたい。

君はもういないけど、今でも思い出す。
あの日いっしょに見た、あの大きな尺玉花火。

できることなら、もう一度。
今度は、もっと近くまで見に行こうよ。

……。

こうやって思い出すと、ちょっぴり後悔がよみがえる。
あのクルマ、手放すんじゃ無かったって。

一番大切な存在に、手紙を書いてみよう。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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