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#187 / 2002.09.17

闘ウdriver

人は、いつ何時でも、ベストな状態であるとは限りません。
何かしらハンディを背負いながらも、走ることをやめない人達もいます。

今という瞬間を走る人達は、みな、仲間です。

ところが、偏見もあるものです。
例えば、運転能力の違い。
運転がうまい人もいれば、下手な人もいます。
持ち合わせている運転センスや性別差、ひいては病を患っているかどうかでも異なってきます。

運転能力に長けているからといって、そうでない人間を理解しなくていいわけではありません。
ましてや感情任せに偏見や非難したりする人もいるようですが、一度、冷静に考えてみましょう。

大抵、知識不足や理解不足なだけなのです。
しかし間違った覚え方をしてしまうと、あの人はこういう人なんだという誤った固定観念を抱き続けることになります。

正しい知識を身につけて、誤解や偏見を1つでも減らしていく努力は必要でしょう。


さて、今回は「統合失調症」について、聞いたこと調べたことを中心に綴ってみたいと思います。
症名は聞き覚えが無いかもしれませんが、「精神分裂病」と言えば伝わると思います。
以後、「統合失調症」で統一して書くことにします。

なお、今回のコラムは、訪問看護士の純一郎さんから寄せられたメッセージをベースとしています。
純一郎さん、ありがとうございました。
また、参考資料として「やさしい精神分裂病ハンドブック」、 「精神科で治療を受ける患者さん、家族のみなさんへ」の2冊子を読みました。


◆ 統合失調症とは

> 統合失調症(旧、精神分裂病)の件なのですが
> そうすね、簡単な病気の概要は手元のパンフレットに書いてあると思うのですが
> 基本的に他の病気と同じように、原因があって、症状がある「病気」というものです

実は、病気だと初めて知りました。
症状を調べてみると、現実を正しく判断する能力が妨げられたり、感情の制御や正しい意思決定ができなくなったり、 よい対人関係を持つことが困難になる病気です。

> 実際の羅患率はかなり高く、人口のうちの0.7〜0.9%の人かかかると言われています

資料によると100人〜120人に1人がかかるそうです。
発病の可能性はどの年齢でもありますが、特に思春期から30歳代に目立ちます。

◆ 統合失調症の原因

> 脳のある部分に異常が起こる病気なのですが、実は原因とかはハッキリしないんですよね
> 症状は幻覚、幻聴などを主とするものなのですが
> 多分に脳内の神経伝達物質が過剰に産生されるために
> 過度の情報が脳に伝わっているために起こるのでは?と言われ始めています

脳内の神経伝達物質という化学物質が過剰に働きすぎて、 情報伝達に混乱をきたすので様々な症状が発症するらしいと言われています。

> よく「精神病は心の病」とかいいますが
> まったくもってそんなことはなく、脳みその病気です
> 脳=心ではあるとおもうのですが
> どちらかというと、心の病というのは「神経症(ノイローゼ)とか人格障害」をさすことが多く
> 統合失調症においては原因不明の内因性の疾患ということになるらしいです

私も「精神病」という言葉から、精神面が原因だと思っていました。
実は、脳に原因があるというのです。

「統合失調症=脳の病気」、この認識は大事ですね。

◆ 症状の種類

> 統合失調症の症状というのは二種類あって
> 幻覚や妄想などというもの「人につけられてる、俺に殺せと言っている」とかは陽性症状と言われ
> 逆に「無気力、人との付き合いにくさ」などは陰性症状と言われます

統合失調症は、大きく分類すると2つ。

  1. 陽性症候群
    妄想(偏執的、被害意識)/幻聴/思考・会話の異常/
    異常行動・落ち着き無さ/異常認識/感情不安定
  2. 陰性症候群
    感情鈍麻(情緒・道徳観の低下、感情反応の消失)/
    思考の貧困/意欲減退/閉じこもり/注意・集中力の障害

> 抗精神病薬は陽性症状には効くのですが、この陰性症状に効きにくかったのです
> それが最近の新薬ではこの陰性症状が改善される事が多くなってきて
> かなり社会復帰率が高くなりました

治療方法として、薬物治療があります。
これについては後述します。

> 実際、自分はそういう統合失調症を持って社会でやっている方の所に行って
> 色々と生活のお手伝いのようなものをさせてもらっています
> さすがに陽性症状が強い人の場合では「何しに来た?」などと玄関先で追い返されたり
> 中には警察を呼ばれたケースもありました

自分が他人のためを思って行動しても、必ずしも他人が好意とうけとってくれるとは限りません。

運転中にパッシングで相手に道を譲ろうとしているときに似ています。
どうぞと譲っても、相手は意味が分からず動かなかったりしていることもあります。
仕方なくこちらが動いて遮ってしまっても、尚も相手はわかっていなかったりします。

実はお節介焼きなことをしているだけのこともあります。
でもやっぱり、自分がした行動の意味が相手に伝わらないのは、寂しいもの。
それは、一番辛いことです。

◆ 統合失調症の治療方法

基本的には薬物療法ですが、それに加えて精神療法やリハビリも行なわれます。

> 治療に使われるのは以前は抗精神病薬と言われる
> 「メジャートランキライザーや精神安定剤」というものが多かったのですが
> 最近は新薬もよく使われるようになっています

錠剤や散剤などの経口薬、あるいは注射薬が用いられます。
実際は、状況に応じて選択されます。

薬の副作用を気にする人もいます。
錐体外路症状(パーキンソン症状:筋収縮、手の震え、呂律が回らない等)、 自律神経系副作用(口が渇く、立ち眩み等)、 および精神症状(眠気、だるさ)が副作用です。
しかし、これら副作用を止める薬もあるので主治医と相談することが大事だそうです。

それに、純一郎さんのおっしゃる新薬には、副作用の出にくいものもある、と付け加えておきます。

また、精神療法もあるとのこと。
これは患者だけでなく患者の周囲、つまりその家族や環境への不安や問題を取り除くことがポイントです。

さきの警察を呼ばれてしまった事件に対して、純一郎さんはこう続けます。

> ですが、薬をきちんと飲めるようになると、そういう症状も減ってくるので
> なんら変わりなく生活を送れる人も多いです
> ストレス脆弱性という特徴をもたれる方も多いのですが
> 往々にして「正直な方」「嘘のつけない方」など、いわゆるいい人が多いです
> あまり融通が効かないといえばそれまでですが
> とても素直でいい人も多いです

患者さんとはいえ、根は、よい人なのです。

> 野菜が取れたととてもうれしそうに見せてくれる方
> いつもおいしいコーヒーを出してくれる方
> 一緒に酒とタバコをやめてみようと言って、俺だけダメだったり
> 付き合ってみるとなんら変わりありません

健康体である私達が、勝手に良からぬイメージを抱いて避けてしまっているだけだったりします。
よく調べもしないのに偏見をもってしまうと、色眼鏡で相手を見てしまう悪い癖がついてしまうから、 注意する必要があります。

実は、純一郎さんからこのメールを頂いたのは、 私のコラム「V or R?」が発端です。
精神病患者すべてが悪いわけではないというご指摘から、今に至っています。
これはちょうど、ハイジャック事件があった時期に書いた文章です。
フライトシミュレータでは飽き足らず、本物の飛行機でハイジャックし、機長を刺殺してしまったという事件でした。

私は無知でした。
統合失調症患者は理性が効かずに犯罪を犯しやすいのでは、という誤った認識もありました。
ただ、純一郎さんのメールをよく読んでみたり、調べてみたりすると、誤解ばかりだったのです。

> よく犯罪の事が多く言われたりしますが
> 統合失調症がある方と一般の方を比べれば、犯罪率はとても低いです
> しかも再犯率もとても低いのです
> 精神障害者全体の刑法犯の率は一般人口と比べて半分以下と言われます
> ただ、一つの犯罪が理解しにくいものでマスコミに取り上げられやすいと言うことと
> 一番重要なことは病状悪化や地域でのケア不足による
> 孤立というものが背景に強く影響されています

人間はウサギと同じ。
一人では生きていけない動物なのです。

> ようは、医療の手からこぼれた人が犯罪を犯してしまいやすいということ
> コレは地域で仕事をする自分にはとても大事な教訓です

それに加えて、家族や周囲も気遣ってあげることも大事ですね。

◆ 家族として周囲として何ができるか

統合失調症は、患者の家族の責任ではありません。
遺伝や育て方を気にする家族も多いようですが、それは考えすぎというものです。

遺伝が影響している場合もありますが、そうでない場合もあります。
両親か兄弟の誰か1人が発病していたとしても、あなたがこの病気にかかる確率は10%程度なのです。
単純に先天的なものだと嘆く必要はないようです。

実際、どんなふうに援助していけばよいのかを少しまとめてみました。

  • 病気に対する正しい知識の習得
  • 毎日の服薬の手助け
  • 途中で治療をくじけないように勇気づける
  • せかさず、期待をかけすぎず、ゆったりペースで回復基調に乗せる
  • 家族同士で励ましあう機会をもつ
    (やさしい精神分裂病ハンドブックより一部要約)

患者にとっては、誰よりも家族が一番の支援者になります。

◆ 最後に

正しい理解がなされていないことが、大きな要因なのだと思います。

> ただ、本当に「精神障害」と言っても、他の病気と同じで
> 一般の方と同じように生活をする権利があり、又普通に生活ができるのだと言うことを
> ちょっと知ってもらえればと思いました
> 偏見さえ持たなきゃたいしてかわりないすよ
> 所詮、人は十人十色で色々な人が居ますからね!

人には違いがあって当たり前です。

不思議なことに、「平等」を是とする人がいます。
平等といっても自由平等という次元ではなく、「画一的」を平等と履き違えている人です。
極端な例では、とある小学校のかけっこでは平等が一番だとして、全員一緒に手をつないでゴールするのだそうです。
小学校からこれでは、みんなと一緒じゃないからはみ出し者だという間違った意識をもつ人間が増えてしまうでしょう。

そうではありません。
得手不得手があるから、新しい生き方もあることを模索できるのです。

メーカーでクルマを選ぶときと同じです。

軽自動車が得意なメーカー。
エンジンが得意なメーカー。
デザインが得意なメーカー。
シェアナンバー1のメーカーを選ばなくても、充分にクルマ生活は楽しめます。

あえて多数派に向かおうとせずに、自分に合った生き方をしていけば良いのです。
他人からとやかく言われる筋合いもないし、勉強すらしないで間違った認識をしている人に言われても全然痛くありません。

他人ではなく、仲間であることを認め合おう。

追記(2002.09.17記)

訪問看護士をされている純一郎さんの協力ですばらしいコラムが書けました。
純一郎さん、ありがとうございました。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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