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#163 / 2002.06.18

軽自動車の存在意義

今、軽自動車論議が熱いです。
軽自動車の優遇税制を撤廃するかどうか、という議論です。
世論では、賛否両論わかれています。

あらかじめ言っておきますが、私は優遇制度賛成です。
「軽自動車の存在意義は非常に高い」と考えています。

どうして、私がそう考えるのでしょうか。
なぜ、反対意見もあるのでしょうか。
そもそも優遇制度って何でしょうか。

こういった点を、長くなりますが、一緒に見ていきましょう。

軽自動車優遇

前提として、現在の軽自動車優遇について少し見ていきましょう。

  • 自動車税
    毎年4月1日時点でクルマを所有していた場合、同年5月31日までに決められた額を納めます。
    軽自動車は年額7,200円(乗用・自家用)。
    普通車は、うんと跳ね上がって29,500円(1000cc未満)〜。
    税額の詳細は、後述の現実(死活問題)を参照してください。
  • 高速道路の通行料
    軽自動車は高速も安いです。
    例えば東北道の仙台宮城(宮城)〜郡山(福島)間116.0km。
    普通車で3,050円、軽自動車だと2,450円。差額は600円です。
    トヨタ・ヴィッツなどの1,000cc車と軽自動車、同じ速度で走ってもこれだけ格差があります。
    ちなみに仙台宮城〜宇都宮(栃木)間229.4kmだと、普通車5,200円、軽4,200円と差額が開きます。
    でも、エンジン馬力とボディ剛性の弱さを考えると、軽自動車は高速道に不向きです。
    それだけ、危険度も高いという一面も忘れてはいけません。
  • 車検代が安い
  • 駐車場代(場所によっては安い)
  • 車庫証明が不要(都市部では必要、いずれ全面撤廃されるでしょう)

他にもありますが、思い出しただけでもこれだけあります。
なぜこれだけ、軽自動車が優遇されているのかといえば、戦後の自動車普及政策によるものです。

国民車構想

「国民車構想」と呼ばれる政策は、1955(昭和30)年6月に国民車育成要綱案として公示されました。
構想は、こういった内容でした。

「国民車構想」
  1. 最高速度は時速100km以上
  2. 乗車定員は大人2名+子供2名、もしくは大人2名+100kg以上の貨物が積載可能
  3. 平坦路では時速60kmで燃費30km/L以上
  4. 修理せず10万km走行が可能他

当時の技術では、とても困難な内容でした。
燃費30km/L以上というのも、現代になってようやく見えつつある段階なのです。
それでも、上記の条件を満たす車の生産には製造、設備、販売の一部資金を政府が負担すると発表しました。

こうして、マイカー所有の夢を助けるべくして生まれたのが軽自動車なのです。
軽自動車の優遇制度もここから来ています。

そして1958(昭和33)年3月3日、富士重工・スバル360の発売を皮切りに、軽自動車が普及していきました。
排気量360cc、全長3,000mm×全幅1,300mm×全高2,000mmという制約の中で、1台のクルマとして成立させたのです。

その後、規格は進化して、現在では排気量660cc、全長3,400mm×全幅1,480mm×全高2,000mmです。
2000年には高速道の100km/h走行も許されています。
そして現在でも、優遇制度は残されています。

優遇制度の是非

さて、この優遇制度に噛み付いたのが、 トヨタ自動車 です。
それもそのはず、トヨタは軽自動車を持っていません。
どうがんばっても軽では採算がとれないから、子会社のダイハツに一任しているのです。
日産自動車 も以前までは噛み付く側でしたが、 日産・モコの登場で一変してしまいました。

トヨタとしては、月販1万台近く売るスズキ・ワゴンR、ホンダ・ライフをみて手をこまねいていました。
ヴィッツももちろん健闘していますが、やはり優遇税制があるからと軽自動車に流れるユーザも多いのです。
そうなるとトヨタにとっては、優遇税制反対となるわけです。
これだけクルマが普及したのだから大昔の優遇政策など要らない、という論理です。

1998年11月の軽の新規格移行時でも、その姿勢はわかります。
トヨタ・日産が現行の660ccを800ccにさせまいとしたのも、1,000cc車との格差が無くなるからです。

ところが面白くないのは、軽自動車メーカー。
軽自動車大手の スズキダイハツ にとっては、会社の存亡に関わる話です。
優遇制度とくに自動車税については、ユーザー負担を強いるような発言をメーカー自身がしてどうするのだと反発しました。
とある雑誌では、優遇税制撤廃に向けた動きがあるという記事も載っていました。
しかし優遇税制の論議は、まだ決着が出ていません。

現実(死活問題)

中小企業と一般家庭には、大変な問題です。
例として自動車税で見ていきましょう。

車種 排気量営業用自家用
軽4輪貨物 〜 660cc3,0004,000
軽4輪乗用 〜 660cc5,5007,200
乗用車 〜1000cc7,50029,500
〜1500cc8,50034,500
〜2000cc9,50039,500
〜2500cc13,80045,000
〜3000cc15,70051,000
〜3500cc17,90058,000
〜4000cc20,50066,500
〜4500cc23,60076,500
〜6000cc27,20088,000
6000cc超40,700111,000

ここで、2つの項目に注目してください。
「自家用」の列、軽4輪乗用 7,200円と乗用車〜1000cc 29,500円の箇所です。

自動車税ですから、毎年4月1日に所有している自動車に対して課税されます。
平たく言えば、軽か普通車かで毎年22,300円も開きがあるのです。
さらに軽貨物だと、年額3,000円(営業用)ですむのです。

もし現在の優遇制度がなくなれば、確実に困るのは中小企業です。
4ナンバーの軽自動車を社用車にすることで、経費削減して生き残っているのです。

例えば、赤帽(全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会)
赤帽は組合員から構成されています。
組合員一人ひとりは個人商店の経営者だったりします。
結局、部類としては中小企業です。
だから、維持費の安い軽自動車なのです。

ちなみに赤帽は、すべてスバル・サンバーの赤帽仕様車にしてあります。
どこにでも走っていく必要があるので、コンパクトで耐久性の高い作りになっています。
赤帽さんのなかには、年間50,000km走る方もいます。

これは一般家庭でも困ります。
ただし、居住地域による意識の格差があります。

大都市部では、鉄道やバスで動けばよく、また駐車場代が高いのでクルマはもたないことが多いです。
クルマを持てても家族で1台だったりするので、遠出も考えて軽自動車を避けるケースが多いようです。
都市部は「大は小を兼ねる」指向だとも言えます。
そんなわけで大都市、とくに東京あたりだとあまり軽自動車を見かけません。

ところが地方では、軽自動車はいわばアシです。
交通機関が発達していない地方では、1人1台でなければどこにも行けません。
そこで1台目を遠出も難しくない普通車にして、2台目以降を思い思いのクルマにするのです。
地方はクルマごとに乗り手も用途も違う「選択型」だと言えます。
つまり生活環境でまったく意識が変わってしまうから、ひとくくりに問題を解決できないのが難しいのです。

クルマに乗れる人間が複数いるのだからそれだけ稼ぐことができるだろう、などという意見の人もいます。
しかし、それは安直すぎです。

収入は居住地でも微妙に変わります。
ひらたく言えば、都会は地方よりは収入は多いです。
物価が高いぶん、収入にゆとりがあります。
これは、べつに羨ましいわけではありません。

でも自動車税は全国一律です。
すると、毎年29,500円以上の徴収が厳しいのです。

また、若い夫婦だと、奥さんが働けない時期もあります。
でも買い物にも行かなきゃいけません。
スーパーやショッピングモールが遠いから、最低週1回は買いだめのために行く必要があります。
でも夫の大きいクルマだと、小回りがきかなかったりします。
それに大きいと、燃費もよくないものです。
そもそも市街地やクネクネした農道を走るのに、大きいクルマはいらないのです。
そこで、軽自動車に脚光が浴びるわけです。

現実(衝突安全性と高速走行性の危惧)

では、軽自動車はそんなに素晴らしいかといえば、そうとは言いきれません。
よく言われるのが、衝突安全性が不安だということです。

はっきり言えば、普通車の安全性にはかなわないです。
三菱パジェロのような大型SUVと軽で衝突したら、絶対、負けます。
それどころか、SUVは凹みもしません。大きく凹むのは軽です。

高速でも怖いです。
ワゴンR(CT型・NAエンジン・3AT)で走ってみました。
なにせ煽られます。
風に煽られ、追い越しで煽られ、おまけにパワーはないときています。
ついでにいえばタイアも細いのです。
車種の違いもあるでしょうが、軽自動車は高速向きではありません。

つまり今の軽では、クルマとして完成の域にあるとは言いがたいのです。

そこで地方では、軽はアシと割り切って使われていることが多いのです。
前述したように、遠出する時は別に所有する普通車でいいのです。

私見

いろいろ見てきましたが、 優遇制度は国民一人ひとりがクルマを持てるようになった今でも必要 とされています。

でも、制度自体が中途半端すぎます。
現行型のサイズは丁度いいのですが、排気量が少なすぎます。
だから燃費が悪いし、馬力も足りないのです。
燃費も、20km/L以上いくという1300ccのフィットに比べると、見劣りしてしまいます。

さらに「軽」であるはずなのに、重い車重。
660ccのSUV、ダイハツ・テリオスキッドと1800ccのトヨタ・MR-Sがほぼ同じ1tです。
ミニバンタイプも、もはや800kg台です。

車両価格も、軽だと割高感があります。
諸費用込み金額で140万円を越えるものはザラ。
対する普通車、例えばヴィッツやマーチ、あるいはフィットだともっと安かったりします。

ここまで来ると、優遇制度の意義がわかりません。
こればかりは冷静に考えたら、背の低いハッチバックと背の高いミニバンとを比較することが間違っています。

だからといって、トヨタみたいに優遇制度撤廃は主張しません。
まず、優遇制度撤廃で、今より経済的に落ち込むでしょう。
それから当然、地方や女性ユーザーの賛成は得られないでしょう。
そもそも軽だけ制度撤廃して普通車の税制にケチをつけないというのは、根本的に論点が違います。

  1. 経済的に落ち込むわけ
    中小企業の倒産が相次ぎ、家計を圧迫することで買い物に行きにくくなります。
    つまり経済が鈍化します。
    当然、月販何万台という軽自動車の需要がなくなれば、ユーザーは買い控えるでしょう。
    軽をやめて税金の高い普通車にするくらいなら、クルマを買わなくてもいいのです。
    地方で家庭に2台以上あれば、既存の普通車1台でやっていけばいいからです。
    軽を撤廃したとしても、軽がないから普通車にする、とは限らないわけです。
  2. 女性は経済的な小型車がお好き
    これは一般論ですから、すべてがそうとは言い切れません。
    しかし家計を預かる身としては、クルマにばかりお金はかけられません。
    小型車が好きというのも、女性脳に関係しています。
    脳の空間認識力は、男性に比べれば不得意です。
    それが悪いということではなくて、それならば小回りのきくクルマを積極的に選ぼうとなるのです。
    したがって、女性の小型車所有率が上がります。
    その選択肢の中に、優遇制度のある軽自動車があるというだけです。
    そもそも、限られた時間や資金をクルマに費やすよりは、オシャレに費やすほうが得策です。
  3. 根本的に、なぜ普通車の自動車税のバカバカしさを疑わないのか
    よく考えてみれば、優遇制度ばかり叩かれて普通車に何も言わないことがナンセンスなのです。
    自動車税の、軽の7,200円と1000ccの29,500円。
    たかだか340cc差で、22,300円。
    ところが1000ccと1300ccだと、29,500円と34,500円で差額5,000円。
    つまり、普通車だというだけで恐ろしく値段が跳ね上がるわけです。
    まさしく桁が違います。
    たしかに経済的にもある程度余裕がないと、加害者になったときの保証も考えてクルマなんて持てっこないでしょう。
    さらにお上の立場ならば、自分達の税収益が下がるから、普通車についてなにも触れたくないのかもわかりません。
    どうせ具体的に税金の使い道を教えてくれないなら、そんな税金は意味がありません。
    もう少し普通車の税金を下げることは、考えないのでしょうか。
    不況対策ならば、我々の血税を減らして消費に充てこませてもいいのです。
    660ccで7,200円なら、例えば「1cc=10.8円」換算というように、排気量に比例させて課税すればいいのではないでしょうか。
    つまり1000ccは10,800円、2000ccは21,600円というようにです。
    これだと、シンプルでわかりやすいです。
    税についてもっといえば、わけのわからない他の税金をなくして自動車税に一本化することも考えて欲しいと思います。
    例えば自動車取得税、自動車重量税などなど。
    ただでさえガソリンを入れて、1L=50円前後の揮発油税まで払っているのです。
    つくづく庶民はなめられているとしか思えません。

私は地方の人間ですから、軽がないと不便だという事実は重々知っています。
現に自宅には、普通車と軽自動車が1台ずつあります。
前述したように、1人1台です。たまに軽にも乗ります。

もしトヨタが無理やり優遇制度撤廃を推し進めれば、トヨタは総スカンを食らう恐れもあるでしょう。
そうなったら私は、おそらくトヨタ車には2度と乗らないでしょう。
これが、私だけなら大したことはありません。
しかし、安易に撤廃するまえに真剣に考えないと、誰もクルマなんて乗らなくなってしまいます。

スッキリしたシステムを考えよう。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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