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#146 / 2002.04.19

MTがなくなる日

「ドチラマデ、行カレマスカ?」
乗り込むと、抑揚の効いた女性の声でそう聞いてくる。
目的地を告げる。
と、同時にガルウィングドアが閉まる。

朝の高速道路。
颯爽と駆け抜けていく。
渋滞なんか起こらない。
交通網は完全にITSの支配化にある。
運転はもちろん自動制御。
だから事故は起こらない。
それに、この車はプロセッサ・チューンをしてあるから、より柔軟に自分の意思に応えてくれる。

かつてはセダンやサルーンなんても呼ばれていたらしい。
高級車だったとはいえ、所詮は大昔のクルマ。
わざわざ、ドライバーが運転しなければいけなかったなんて考えられない。
ショーファードリブン(お抱え運転手)なんていた時代があったとは、驚きですらある。

クルマはすべて自動制御。
だから、操作はいらない。
それが当たり前だろう。
いちいちギアをガチャガチャやるドライバーなんて、いまどきレトロカーマニアくらいなもの。
AT?それとて旧時代の遺物にすぎない。
今の時代ではそういったクルマが走っていたことすら、忘れ去られてしまった。

あぁ、次の目的地までまだ27分ある。
お気に入りのミニ・フィルムを見るにはちょうどいい長さか。
移動時間は、すべてプライベートタイムに充てられる。


先日、ある自動車雑誌にAT車比率の話題が取り上げられていました。
メーカーごとにAT車比率を割り出したところ、スバル以外は90%以上でした。
とりわけ、RV車やミニバンを得意とする、三菱、ホンダはATだらけです。
ウチはスポーツカーがあるから100%にはなり得ない、というメーカーもあります。
しかし90%がATなのだから、スポーツカーのイメージと結びつけようにも違和感を感じます。
国内で一番MTの多いスバルでさえ78%ですから、ユーザは確実にAT志向であることがうかがえます。

「どうしてもマニュアル車に乗りつづけたい」

私は、根っからのMT車ドライバーです。
クルマは楽しむために存在する、と考えています。
シフトフィールを堪能しながらアクセルを開けるのが一番好きです。
そうなると、おのずとミッションはMTです。
むしろMTでなければ、楽しくありません。

さきの仮想未来はもしかしたら数10年、あるいは数100年後未来の現実となるかもしれません。
もしかしたら、ミッションという概念すら消え去っているかもしれません。

乗せられているだけのクルマに、どれほどの魅力があるのか。
そんなクルマは、願い下げです。

そして先程の仮想未来は、こう続きます。


いい時代になったと思う。
技術の進化で、移動時間に束縛されることから解放された。

しかし。

我々人類の、手と脚は退化してしまった。
結局、脳だけが残ってしまった。
この数100年で、機械無しには生きられなくなってしまったのさ。

機械の終焉が人類の終焉とは、本当に皮肉なものだな。

AT車でも積極的にシフトしよう。

追記(2011.11.02記)

文体を変更しました。

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